売掛金が支払われないとき、やることは決まっています。①電話とメールで催促して記録を残す、②内容証明郵便で期限を切って請求する、③支払督促を申し立てる、④支払督促に異議が出たら訴訟(60万円以下なら少額訴訟)、⑤判決や仮執行宣言をもとに強制執行。この順番です。飛ばしても構いませんが、順番どおりに進めたほうが費用が安く、かつ「請求した証拠」が積み上がります。支払督促の申立手数料は訴訟の半額で、訴額50万円なら2,500円です。ただし時効だけは待ってくれません。まずそこから確認してください。
私はファクタリングの買取事業者として、売掛債権を審査する側にいます。この記事では、回収の手順と、回収を待っている間の資金繰りの両方を整理します。
売掛金が支払われないとき、最初に確認する3つのこと
行動する前に、手元の資料で3点を確認してください。ここを確認しないまま催促を始めると、相手に反論の余地を与えます。
1. 支払期日はいつだったのか
契約書、発注書、請求書のどこかに支払期日が書かれているはずです。「月末締め翌月末払い」という取引条件も期日の定めです。期日が過ぎていなければ、それは未払いではなく待っている状態です。
なお、業務委託を受ける側であれば、支払期日には法律上の上限があります。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法/令和五年法律第二十五号)第四条第一項は次のように定めています。
特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(中略)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
同条第二項は、支払期日が定められなかったときは給付を受領した日が支払期日とみなされる、と続きます。つまり「期日を決めていない」は、支払わなくてよい理由にはなりません。
2. 債権の内容を特定できるか
誰に対する、いくらの、何の代金か。これが書面で特定できるかどうかが分かれ目です。発注のやりとりがLINEや口頭だけの場合も、後述する手順は使えますが、立証の手間が増えます。
3. 相手の状況はどうなっているのか
払えないのか、払う気がないのか、そもそも連絡が取れないのか。この3つは対応が違います。連絡が取れないケースは、住所の確認から始める必要があります。相手が倒産手続に入っている場合はまったく別の話になるため、取引先が倒産したら売掛金はどうなるかを先に読んでいただくほうが早いと思います。
審査する側から見るとこうです。 当社が通帳を確認するとき、入金が止まった月を探します。そのとき「いつから止まったか」を本人が即答できる方と、通帳を見ながら一緒に探す方がいます。前者のほうが、その後の資金繰りの説明も一貫しています。回収は記録の管理から始まる、と当社では判断しています。
段階1:催促(電話・メール)で記録を残す
最初の一手は催促です。ここで大切なのは、回収そのものよりも記録が残る形で請求した事実をつくることです。
電話だけで終わらせない
電話は速いので使いますが、それだけでは「請求した」という証拠が残りません。電話で話したあと、必ずメールで「本日お電話でお話しした件の確認です」と送ってください。相手からの返信が「来週払います」の一行でも、それは債務の存在を認めた記録になります。
催促メールに入れる5項目
- 請求書番号と請求日
- 請求金額
- 当初の支払期日
- 新しい入金希望日(相手に日付を決めさせず、こちらから提示する)
- 返信の期限
相手が「払う」と言ったら日付を書面にする
口頭で「もう少し待ってほしい」と言われたら、金額と日付をメールで確認します。相手を追い込むためではなく、次の段階に進むかどうかを判断する材料にするためです。約束した日に入らなければ、催促の段階は終わりです。
審査する側から見るとこうです。 当社が見ているのは企業規模や格付けではなく、通帳に残った入金の実績です。入金が遅れている売掛先について、いつ・どう催促し、相手が何と答えたかを示せるかどうかを、当社では判断材料のひとつにしています。
段階2:内容証明郵便で請求する
催促に反応がない、または約束が守られないときは、内容証明郵便に切り替えます。
内容証明でできること・できないこと
内容証明郵便は「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を出したか」を郵便局が証明する制度です。それ自体に強制力はありません。 相手の財産を押さえる効力もありません。
できることは2つです。ひとつは、相手に「次は法的手続に進む」と伝わることです。もうひとつは、時効の完成を6か月間猶予できることです(民法第百五十条第一項)。この条文は後述します。
費用の内訳
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 基本料金(定形郵便物) | 重量により異なる | 25gまでは110円 |
| 内容証明料 | 480円 | 謄本1枚あたり。2枚目以降は1枚ごとに290円加算 |
| 一般書留 | 480円 | 内容証明は一般書留とする必要があります |
| 配達証明(差出時) | 350円 | 差出後に依頼する場合は480円 |
1枚の文面なら、合計はおおむね1,400円台に収まります。配達証明は必須ではありませんが、相手が受け取った日付を残すために付けることをおすすめします。窓口で差し出す方法のほか、オンラインで差し出す電子内容証明(e内容証明)もあります。
文面に入れる要素
請求の内容と金額、支払期日、入金がない事実、新たな支払期限(差出日から1〜2週間程度)、期限内に入金がない場合は法的手続をとる旨。これだけで足ります。感情的な表現は入れません。後で裁判所に提出する可能性がある文書です。
審査する側から見るとこうです。 内容証明を出した時点で、相手が払える状態にあるかどうかがだいたい分かります。無反応なら資金がないか、意図的に無視しています。当社では、無反応の売掛先が混じっている事業者様については、その1社だけを切り離して判断するのではなく、他の売掛先からの入金が継続しているかを通帳全体で確認しています。
段階3:支払督促を申し立てる
内容証明でも動かないときは、裁判所の手続に入ります。最初に検討するのが支払督促です。
支払督促とは何か
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百八十二条は次のとおりです。
金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。
裁判官ではなく裁判所書記官が出します。相手の言い分を聞く審理もありません。書類審査だけで支払いを命じる督促が出ます。だから安く、速いのです。
どこに申し立てるのか
同法第三百八十三条第一項です。
支払督促の申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してする。
相手の住所地の簡易裁判所です。自分の住所地ではありません。ここを間違える方が多い部分です。なお、インターネットを利用する督促手続オンラインシステムを使う場合は、東京簡易裁判所に申し立てる運用があります。
手数料は訴訟の半額
| 訴額 | 訴え提起(書面) | 支払督促(書面) |
|---|---|---|
| 10万円 | 1,000円 | 500円 |
| 20万円 | 2,000円 | 1,000円 |
| 30万円 | 3,000円 | 1,500円 |
| 50万円 | 5,000円 | 2,500円 |
| 60万円 | 6,000円 | 3,000円 |
| 100万円 | 10,000円 | 5,000円 |
| 140万円 | 12,000円 | 6,000円 |
| 200万円 | 15,000円 | 7,500円 |
| 300万円 | 20,000円 | 10,000円 |
このほかに郵便費用がかかります。裁判所の案内では、申立手数料と郵便費用に相当する額を合わせて納める扱いになっています。金額や納付方法は裁判所ごとの運用で異なる部分があるため、申立先の簡易裁判所に確認してください。
申立て後の流れと2週間の壁
支払督促が相手に送達されると、相手には異議を申し立てる期間があります。民事訴訟法第三百九十一条第一項は次のとおりです(民事訴訟手続のIT化に伴い、条文上は「電子支払督促」と記載されています)。
債務者が電子支払督促の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、電子支払督促に手続の費用額を併せて記録して仮執行の宣言をしなければならない。ただし、その宣言前に督促異議の申立てがあったときは、この限りでない。
仮執行宣言の申立ては、異議の期間が過ぎてから30日以内に行う必要があります。そして第三百九十六条です。
仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する。
確定判決と同一の効力です。これが支払督促のいちばん重い部分です。数千円の手数料で、強制執行に進める文書が手に入ります。
異議が出たら訴訟に移る
相手が督促異議を申し立てると、その事件は通常の民事訴訟に移行します。訴額に応じて簡易裁判所または地方裁判所で審理されます。つまり支払督促は「相手が黙っていれば速い」手続です。争う姿勢が明らかな相手には向きません。
審査する側から見るとこうです。 支払督促まで進んだ債権は、当社の買取対象としては扱いが難しくなります。回収が争いになっている債権は、入金の継続性を通帳で確認できないからです。当社としては、回収の手続に入る前の段階でご相談いただくほうが、選択肢が広いと判断しています。
段階4:少額訴訟と通常訴訟の使い分け
相手が争う姿勢を見せている場合、あるいは支払督促に異議が出た場合は、訴訟で決着させることになります。
少額訴訟の要件
民事訴訟法第三百六十八条第一項です。
簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
ただし書の回数について、裁判所の案内では「1人につき同じ裁判所に年間10回まで」と説明されています。
少額訴訟の特徴
- 原則として1回の期日で審理を終え、その日に判決が出ます
- 証拠はその期日に出せるものに限られるため、準備を前倒しする必要があります
- 判決では、3年を超えない範囲で支払猶予や分割払いが定められることがあります
- 判決を受け取った日の翌日から2週間以内に異議が申し立てられなければ確定します
回収手段の比較
| 手段 | 費用の目安 | 強制力 | 相手が争う場合 |
|---|---|---|---|
| 電話・メール催促 | ほぼ0円 | なし | 進まない |
| 内容証明郵便 | 1,400円台〜 | なし(時効の完成を6か月猶予) | 進まない |
| 支払督促 | 訴訟の半額+郵便費用 | 仮執行宣言付きで確定判決と同一の効力 | 通常訴訟に移行 |
| 少額訴訟(60万円以下) | 訴額に応じた手数料 | 判決に基づき執行可能 | 1回の期日で判断される |
| 通常訴訟 | 訴額に応じた手数料 | 判決に基づき執行可能 | 期日を重ねて審理 |
| 強制執行 | 別途申立費用 | 財産を差し押さえる | — |
相手が黙って払わないだけなら支払督促。60万円以下で相手の主張がはっきりしているなら少額訴訟。争点が複雑で金額も大きいなら通常訴訟、という整理になります。
審査する側から見るとこうです。 訴訟に進んだ債権は、判決が出ても入金までに時間がかかります。当社にご相談いただく方の多くは、この「判決までの数か月」で資金が尽きかけています。
段階5:強制執行で回収する
判決や仮執行宣言付支払督促を得ても、相手が払わないことはあります。そのときに使うのが強制執行です。
何を差し押さえるのか
実務でよく使われるのは、相手の預金債権、相手が第三者に対して持っている売掛債権、給与などです。不動産や動産の差押えもありますが、費用と手間がかかります。
差し押さえる先を特定できるかが勝負
強制執行で最大の壁は、相手のどの財産を押さえるかを申立人が特定しなければならない点です。取引銀行の支店名まで分かっているかで結果が変わります。過去の振込記録や請求書のやりとりから、相手の取引銀行を確認しておくことが実質的な準備になります。なお、少額訴訟の判決などに基づく金銭債権の差押えには、簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる少額訴訟債権執行という手続があります。詳細と費用は申立先の簡易裁判所にご確認ください。
審査する側から見るとこうです。 強制執行まで進んだ時点で、相手の資金状況はかなり悪いことが多いです。当社では、回収可能性を相手の規模で測るのではなく、その売掛先から過去に実際に入金があったかどうかで測っています。
時効と遅延損害金を条文で確認する
回収の手順を進めるうえで、時効は無視できません。ここは要約せず条文そのままで確認します。
債権の時効期間
民法(明治二十九年法律第八十九号)第百六十六条第一項です。
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
売掛金は通常、支払期日を知っているため「知った時から五年間」が問題になります。支払期日から5年が一応の目安です。
催告で6か月猶予される
第百五十条です。
催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
第二項が重要です。催告を繰り返しても猶予は延びません。 内容証明で6か月稼いだら、その間に次の手を打つ必要があります。
裁判上の請求と支払督促で猶予・更新される
第百四十七条です。
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
支払督促が第二号に挙げられています。手数料が安いだけでなく、時効対策としても機能します。
相手が認めれば時効は振り出しに戻る
第百五十二条第一項です。
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
相手が「払います」と書面で認めれば、時効はそこから再スタートします。催促メールへの返信を保存しておく理由はここにもあります。
協議の合意でも猶予できる
第百五十一条第一項です。
権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
遅延損害金は年3%
利率の約定がない場合は法定利率によります。第四百四条第二項は「法定利率は、年三パーセントとする」と定め、同条第三項で3年を一期として変動する仕組みになっています。法務省は、第3期(令和8年4月1日から令和11年3月31日まで)の基準割合が年0.4%と告示され、変動幅が1%未満であるため法定利率は3%のまま変動しないと公表しています。
| 売掛金 | 遅延日数 | 遅延損害金(年3%) |
|---|---|---|
| 30万円 | 180日 | 約4,438円 |
| 50万円 | 90日 | 約3,698円 |
| 100万円 | 60日 | 約4,931円 |
金額としては大きくありません。請求書に付けて相手に伝える意味はありますが、回収の主目的にはなりません。
審査する側から見るとこうです。 時効が近い債権は、当社の買取対象としても扱いが難しくなります。支払期日から長く経っている請求書をお持ちの方には、まず時効の起算点を確認していただくようお願いしています。
回収を待っている間の資金繰りをどうするか
回収の手続は、早くても数週間、訴訟に進めば数か月かかります。その間の支払いは止まりません。ここで判断を誤ると、回収に成功しても事業が続かないことがあります。
まず借りない選択肢を並べる
- 納税の猶予・換価の猶予:税金の支払いを一時的に止める、または分割にする制度です。詳しくは納税の猶予制度の使い方にまとめています
- 日本政策金融公庫の融資:金利が低く、個人事業主向けの制度もあります
- 信用保証協会つきの融資:金融機関と保証協会をセットで使う形です
- 他の売掛金の回収を前倒しする:詰まっている1社以外に、交渉できる先がないか確認します
- 支払サイトの交渉:自分が支払う側の期日を延ばせないか相談します
「いつ足りないか」を先に出す
どの手段を選ぶにしても、不足する日と金額が分からないと判断できません。何日後にいくら足りないのかを紙に落としてから動いてください。
ファクタリングを検討する場合
回収が止まっている1社の請求書ではなく、入金が継続している別の売掛先の請求書を現金化する方法があります。売掛債権の売却なので借入にはならず、負債も増えません。
当社の場合、支払期日は60日以内が目安で、買取金額は5万円から1億円までとしています。下限を5万円にしているのは、少額の相談を断らないためです。書類が揃えば最短即日で対応し、オンラインで完結します。全国対応です。手数料は一律の料率を公表しておらず、個別に見積もりを出しています。
審査で当社が見ているのは、①事業年数 ②月商 ③売掛先からの入金の継続性 ④通帳全体の資金の流れ ⑤提出書類の正確さと一貫性の5項目で、この順番で確認しています。売掛先の信用力は確認しますが、企業規模や格付けではなく、通帳に残った入金の実績で測っています。なお、納税証明書は必須としておらず、滞納の有無を手数料条件に反映することもしていません。印鑑証明書や納税証明書は必須ではありませんが、提示があれば査定が上がる可能性があります。
売掛金を現金化する手段の全体像は売掛金を現金化する方法にまとめています。
審査する側から見るとこうです。 「回収できない1社」を抱えたまま相談に来られる方は珍しくありません。当社が判断しているのは、その1社を除いた事業全体が回っているかどうかです。入金が止まった先が1社で、他が継続しているなら、選べる手段はあります。全社の入金が止まっている場合は、資金調達より先に事業の見直しが必要だと当社では考えています。
よくある質問
Q1. 内容証明を出さずに支払督促から始めてもいいですか
制度上は可能です。内容証明は支払督促の前提条件ではありません。ただし、内容証明に反応する相手も一定数いるため、費用1,400円台で1〜2週間試す価値はあると当社では考えています。相手が完全に連絡を絶っている場合や、時効が迫っている場合は、支払督促から入る判断もあります。
Q2. 相手が支払督促に異議を出したら、払った手数料は無駄になりますか
無駄にはなりません。督促異議が出ると事件は通常の民事訴訟に移行し、支払督促の申立手数料は訴訟の手数料に充当される扱いになります。手続が振り出しに戻るわけではありません。詳しい取扱いは申立先の裁判所に確認してください。
Q3. 契約書がない取引でも回収できますか
できる場合があります。発注のメール、納品の記録、見積書、相手からの返信など、取引の存在と金額を示す資料が揃っていれば、それが証拠になります。契約書1枚だけが証拠ではありません。ただし口頭のみで記録が何も残っていない場合は、立証が難しくなります。
Q4. 相手の住所が分からないときはどうすればいいですか
支払督促は、相手に送達できることが条件です(民事訴訟法第三百八十二条ただし書)。住所が不明だと送達できないため、まず住所の特定が必要になります。法人であれば登記情報から本店所在地を確認できます。個人の場合は、請求書や契約書に記載された住所、振込の記録などから確認していくことになります。
Q5. 時効が過ぎてしまった売掛金は、もう請求できませんか
時効期間が過ぎていても、相手が時効を主張(援用)しない限り、請求そのものはできます。また、期日から5年が経っているように見えても、途中で相手が支払いを認めていた場合は時効が更新されている可能性があります(民法第百五十二条第一項)。時効の起算点と更新の有無は個別の事情によるため、判断が難しい場合は弁護士にご相談ください。
Q6. 弁護士に依頼すべき金額の目安はありますか
金額の目安を一律に示すのは難しいのですが、判断材料は3つです。回収できる見込み額、弁護士費用、自分が手続に使う時間。少額訴訟や支払督促は本人でも申立てができる設計で、裁判所の窓口でも書式の案内を受けられます。一方で相手が争ってきた場合や、金額が大きく争点も複雑な場合は、専門家に相談したほうが結果が変わることがあります。
Q7. 回収中の売掛金をファクタリングで現金化できますか
支払期日を過ぎて回収が止まっている債権は、当社では買取が難しいと判断しています。入金の継続性を確認できないためです。一方で、同じ事業者様が持っている別の売掛先の、期日前の請求書であれば、通常の審査で検討できます。回収が止まっている1社と、事業全体を分けて考えていただくのが実務的だと当社では考えています。
まとめ
売掛金の回収は、①催促で記録を残す、②内容証明で期限を切る、③支払督促を申し立てる、④異議が出たら訴訟(60万円以下は少額訴訟)、⑤強制執行、という順番で進めます。支払督促は訴訟の半額の手数料で、仮執行宣言が付けば確定判決と同一の効力を持ちます(民事訴訟法第三百九十六条)。まず検討する価値のある手続です。
同時に見ておく必要があるのが時効です。売掛金は支払期日から5年(民法第百六十六条第一項第一号)。催告による猶予は6か月で、繰り返しても延びません(同第百五十条)。支払督促と裁判上の請求は猶予・更新の事由になります(同第百四十七条第一項)。
そして、回収と資金繰りは別の問題です。手続が進んでいても、支払いは待ってくれません。借りない選択肢を先に並べ、それでも足りないときに、入金が継続している別の売掛先の請求書を現金化するという順番で考えていただくのが、当社としておすすめする進め方です。
出典
いずれも2026年10月1日に確認しました。
- e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第百四十七条・第百五十条・第百五十一条・第百五十二条・第百六十六条・第四百四条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百六十八条・第三百八十二条・第三百八十三条・第三百九十一条・第三百九十六条 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
- e-Gov法令検索 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)第四条 https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025
- 裁判所 支払督促 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_22/index.html
- 裁判所 少額訴訟 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_02/index.html
- 裁判所 手数料 https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/tesuuryou/index.html
- 裁判所 手数料額早見表 https://www.courts.go.jp/assets/tesuuryo_hayami.pdf
- 裁判所 督促手続オンラインシステム https://www.toku-on.courts.go.jp/GA0102.html
- 法務省 令和8年4月1日以降の法定利率について https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00366.html
- 日本郵便 国内の料金表(オプションサービス) https://www.post.japanpost.jp/send/fee/kokunai/option.html
- 日本郵便 内容証明 https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/index.html
裁判所の手続費用のうち郵便費用は、申立先の裁判所の運用によって金額や納付方法が異なる場合があります。申立ての前に、管轄の簡易裁判所にご確認ください。郵便料金は改定される場合があります。
本記事は、当社における審査の考え方をまとめたものです。判断の基準は事業者ごとに異なります。また、記載している条件は変更される場合があります。

