先に結論から書きます。「勤務先へ電話をかけること」は、法律のどこにも義務として書かれていません。貸金業法が貸し手に命じているのは「返済能力の調査」であって、その手段は各社の判断に委ねられています。だから書類での確認に置き換えることができますし、実際そうしている会社もあります。ただし、勤務先に知られる経路は在籍確認だけではありません。本当に注意すべきなのは、借りる前ではなく借りたあとにあります。
在籍確認とは何か
在籍確認とは、申込者が申告した勤務先に、実際にその人が勤めているかどうかを貸し手が確かめる手続きです。方法として最もよく知られているのが、勤務先への電話連絡です。
ただし、ここで多くの解説が飛ばしている点があります。在籍確認という言葉は、法令用語ではありません。貸金業法にも、施行規則にも、「在籍確認」という語は出てきません。業界の実務のなかで使われてきた呼び名です。
法令に存在しないということは、その手続きの中身も、やるかやらないかも、法律が細かく決めているわけではないということです。何が定められているのかを、先に確認しておきます。
法律が貸し手に義務づけているのは「返済能力の調査」
貸金業法第13条第1項は、こう定めています。
貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合には、顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査しなければならない。
義務の対象は「調査」です。調査の方法は書かれていません。電話も、訪問も、書類も、条文には出てきません。
一方で、方法まで指定されている義務もあります。同条第2項は、個人と契約する際には指定信用情報機関の信用情報を「使用しなければならない」と定めています。こちらは手段が特定されています。第3項は、一定額を超える貸付けでは源泉徴収票などの提出を受けなければならないと定めています。これも手段の指定です。
つまり貸金業法は、手段を指定すべきところでは指定しているのです。そのうえで、勤務先の確認方法については何も書いていない。これは書き漏らしではなく、方法を問わないという設計だと読むのが自然です。
| 貸金業法第13条 | 義務の内容 | 手段の指定 |
|---|---|---|
| 第1項 | 返済能力に関する事項を調査する | なし(方法は各社の判断) |
| 第2項 | 指定信用情報機関の信用情報を使用する | あり(信用情報機関) |
| 第3項 | 一定額超では収入証明書の提出を受ける | あり(源泉徴収票等) |
| 第4項 | 調査に関する記録を作成し、保存する | 内閣府令の定めによる |
第3項の「一定額」の基準は、日本貸金業協会が次のように説明しています。ある1社からの借入残高が50万円を超える場合、または複数の貸金業者からの借入れの合計が100万円を超える場合です。認められる書類は、源泉徴収票、支払調書、給与の支払明細書、確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書、納税通知書、納税証明書、所得証明書、年金証書または年金通知書の10種類とされています。
見落とされやすいのが第4項です。調査の記録は作成し、保存しなければなりません。在籍確認をどうやって行い、どう確認が取れたのかは、貸し手の内部に記録として残ります。申込者からは見えませんが、残ります。
在籍確認で確かめているのは、たった一つのことだけ
ここは、審査をする側から見るとはっきりしています。
在籍確認で確認できることは、「申告された勤務先に、その人が在籍している」という一点だけです。年収は分かりません。勤続年数も分かりません。役職も、評価も、今後その会社に残るかどうかも分かりません。電話口の相手は、たいてい本人のことをよく知らない人です。
では何のために行うのか。申告内容が事実かどうかを、最低限のコストで確かめるためです。返済能力の調査は、申込書に書かれた情報を出発点にします。その出発点が事実でなければ、そこから先の計算はすべて無意味になります。だから土台を一つだけ確かめる。それが在籍確認の役割です。
私はファクタリングの審査をする側にいます。カードローンの審査はしていません。ただ、申告内容の裏取りをどこかで一度だけ行うという考え方は共通しています。私の場合、それは通帳です。売掛先からの入金が、申告どおりの周期と金額で繰り返し着地しているか。そこを見れば、書類の体裁が整っているかどうかとは別の事実が分かります。何を見ているかはファクタリングの審査で実際に見ている5つのことに整理しました。
確認したいのは一点だけで、その一点さえ取れれば手段は問わない。この構造を理解すると、次の話がわかりやすくなります。
だから書類で代替できる
確認したいのが「在籍している事実」だけであれば、それを示す書類があれば電話は要りません。実務で使われるのは、社会保険証、直近の給与明細、社員証といった、勤務先との結びつきが記載されたものです。
近年、書類による確認を前面に出す事業者が増えています。理由はいくつか考えられます。申込者側の抵抗が強く、電話連絡が離脱の原因になっていたこと。オンライン完結の申込みが主流になり、電話だけが手作業として残っていたこと。そして、勤務先への連絡が本人以外に借入れの事実を推測させる余地を残すという点です。
とはいえ、書類で完結すると決まっているわけでもありません。申告内容と書類の間に食い違いがある場合、勤務先が確認しづらい形態である場合、書類が揃わない場合には、電話連絡に切り替わることがあります。申し込む前に、その会社が何を必要としているかを確認しておくのが確実です。
電話がかかってくる場合、実際には何が起きるか
電話連絡が行われる場合でも、想像されているような会話にはなりません。
聞かれるのは「◯◯さんはいらっしゃいますか」という一言です。それに対して「本日は不在です」「席を外しています」と返っても、在籍の確認としては成立します。本人が電話に出る必要は、必ずしもありません。
また、貸金業法第21条第1項第5号は、借入れに関する事実を本人以外に明らかにすることを禁じています。これは取立ての場面を対象にした規定ですが、借入れの事実を第三者に知らせないという原則は、業務全体の前提として扱われています。担当者が個人名で名乗るのは、この原則にもとづく運用です。
それでも不安が残るのは当然です。電話そのものが珍しい職場もありますし、代表番号で受ける人が決まっている職場もあります。気になる場合は、申し込み前に電話連絡の有無、実施される時間帯、名乗り方を確認しておくとよいと思います。確認すること自体が審査に不利に働くことはありません。
「会社に知られる」経路は、在籍確認の電話だけではない
ここからが本題です。在籍確認を心配している人の多くは、実は「在籍確認」を心配しているのではなく、「会社に知られること」を心配しています。であれば、経路を全部並べたほうがいい。
| 経路 | 発生する場面 | 実際のところ |
|---|---|---|
| 在籍確認の電話 | 申込時 | 用件は告げられない。書類で代替される場合もある |
| 郵送物 | 契約時・明細送付時 | Web明細を選べば発生しないことが多い |
| 信用情報機関の記録 | 申込時・契約中 | 勤務先は閲覧できない。加盟事業者のみ |
| 官報への掲載 | 自己破産・個人再生 | 勤務先が日常的に確認することはまずない |
| 給与の差押え | 判決等が確定したあと | 裁判所から勤務先に命令が届く。避けられない |
上の4つは、対処の余地があります。最後の1つだけが、性質が違います。
延滞したあとのほうが、勤務先に知られる可能性は高い
給与の差押えは、民事執行法にもとづく手続きです。債権者が裁判所に申し立て、差押命令が出ると、命令は勤務先(第三債務者)に送達されます。勤務先は、給与から差し押さえられた分を債権者に支払う義務を負います。つまり勤務先は、手続きの当事者になります。知られるかどうかではなく、知らせなければ制度が動きません。
在籍確認の電話は用件を告げません。差押命令は、裁判所の名前で、内容を明記して届きます。どちらが重いかは、比べるまでもありません。
ただし、ここに至るまでには段階があります。返済が滞る、督促が届く、それでも支払われない、訴訟や支払督促が起こされる、判決等が確定する、差押えが申し立てられる。途中で止める余地は何度もあります。裁判所から書類が届いた段階でも、まだ手はあります。避けるべきなのは、届いたものを開封しないまま放置することだけです。
なお、取立ての場面で勤務先に電話をかけることは、貸金業法第21条第1項第3号によって「正当な理由がないのに」行うことが禁止されています。同項第1号と施行規則第19条は、午後9時から午前8時までの時間帯の電話・訪問を原則として禁じています。第7号は、本人以外に代わりに払えと要求することを禁じています。登録を受けた事業者であれば、これらの規制の下にあります。
逆に言えば、これらを平然と破る相手は、登録を受けていない可能性が高いということです。見分け方はヤミ金の見分け方にまとめました。
申し込んだ記録は6か月残る
在籍確認より現実的で、しかもあまり知られていないリスクがあります。申し込んだという事実そのものが記録に残ることです。
指定信用情報機関のひとつであるCICは、保有する情報の種類と保有期間を次のように公表しています。
| 情報の種類 | 記録される内容 | 保有期間 |
|---|---|---|
| 申込情報 | 加盟会員が照会した事実(照会日、商品名、契約予定額など) | 照会日より6か月間 |
| クレジット情報 | 契約内容と支払状況(残債額、入金履歴、延滞の有無など) | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
| 利用記録 | 利用途上で加盟会員が照会した事実 | 利用日より6か月間 |
ここで重要なのは、申込情報が「契約したかどうかに関係なく」残るという点です。審査に通らなかった申込みも、照会の事実として6か月間記録されます。
短い期間に何社にも申し込むと、その履歴がそのまま見えます。次に審査する会社は、「この人は何社にも申し込んでいて、どことも契約に至っていない」という状態を読み取ることになります。焦って手当たり次第に申し込むことが、かえって次を遠ざける。在籍確認を気にするより、こちらのほうが実害が大きいと私は思います。
なお、この記録を閲覧できるのは信用情報機関の加盟事業者だけです。勤務先が見ることはできません。
銀行のカードローンと貸金業者で、何が違うのか
同じ「カードローン」でも、根拠となる法律が違います。貸金業者は貸金業法、銀行は銀行法の下にあります。総量規制(年収の3分の1)は貸金業法の規定なので、銀行には直接適用されません。
ただし、規制されていないから緩い、という話ではなくなっています。全国銀行協会は2017年3月16日、理事会で「銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせ」を決定し、改正貸金業法の趣旨を踏まえて審査態勢等の整備を徹底するとしました。
その後の実態を、金融庁が2018年8月22日に公表しています。数字で見ると変化は明確です。
| 項目 | 申し合わせ前 | 申し合わせ後 |
|---|---|---|
| 貸金業法と同水準以上の収入証明書徴求基準 | 約1割(12行) | 約9割(96行) |
| 年収債務比率による融資上限枠の設定 | 約5割(58行) | 約9割(93行) |
| 融資後に信用情報照会を行っていない銀行 | 39行 | 20行 |
さらに、上限枠を設定した93行のうち約7割(71行)が、自行・他行のカードローンに加えて貸金業者からの借入れも勘案しています。上限は年収の2分の1が59行、3分の1が9行という内訳です。
在籍確認の観点で言えば、勤務先の確認を行うこと自体はどちらも同じです。根拠法の違いが、確認の有無を左右するわけではありません。
勤務先への連絡を避けたい事情があるとき、ほかに何ができるか
借りること以外の選択肢を先に置いておきます。
生活福祉資金貸付制度、国民健康保険料や年金保険料の減免・猶予、国税や地方税の納付猶予など、条件に当てはまれば使える制度があります。窓口は市区町村の社会福祉協議会や自治体です。どれも勤務先への連絡を前提としていません。
支払いの相手と直接交渉する方法もあります。家賃、公共料金、税金。多くは分割や猶予の相談窓口があります。借りて払うより、待ってもらうほうが総額は小さくなります。
事業収入があるなら、選択肢はもう一つあります。個人事業主やフリーランスで、取引先への請求が発生しているのであれば、その売掛債権を期日前に現金化する方法です。この場合、確認の対象は申込者の勤務先ではなく、売掛先からの入金実績になります。勤務先への電話は発生しません。手元の資金がいつ足りなくなるのかを先に把握しておく方法は資金繰り表の作り方に書きました。
ひとつ強く注意しておきたいことがあります。「給与を買い取る」「給料前払い」といった名目で、勤務先への連絡なしに即日現金化できると謳う相手があります。金融庁は、給与を対象とするいわゆる給与ファクタリングについて、貸金業に該当するとの見解を示しています。登録のない者がこれを行えば無登録営業です。詳しくは給与ファクタリングが違法とされる理由をご覧ください。勤務先に知られたくないという気持ちに付け込んでくる相手が、最も危険です。
よくある質問
Q. 在籍確認の電話を断ることはできますか。
確認の方法について相談することはできます。書類での確認に対応している会社であれば、その方法を案内してもらえる場合があります。ただし「確認そのものを省いてほしい」という要望は通りません。返済能力の調査は貸金業法第13条第1項が定める義務であり、貸し手の側に省く裁量がないためです。
Q. 電話に本人が出なければ、在籍確認は取れませんか。
本人が出る必要は必ずしもありません。「本日は不在です」といった応答でも、その職場にその人が在籍していることは確認できます。むしろ本人が出ることを前提にしていない運用のほうが一般的です。
Q. 派遣社員やアルバイトでも在籍確認はありますか。
雇用形態によって扱いが変わるわけではありません。派遣社員の場合、確認先が派遣元になるか派遣先になるかは会社によって異なります。申込時に、どちらを申告すべきかを確認しておくと行き違いが防げます。
Q. 個人事業主やフリーランスの場合はどうなりますか。
勤務先がないため、確認の対象は事業の実在と収入に移ります。確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書などの提出を求められるのが一般的です。日本貸金業協会が挙げる収入証明書類にも、これらが含まれています。
Q. 在籍確認の記録は、どこかに残りますか。
貸し手の内部には残ります。貸金業法第13条第4項が、調査に関する記録の作成と保存を義務づけているためです。ただしこれは貸し手の記録であり、信用情報機関に「在籍確認を行った」という項目が登録されるわけではありません。信用情報機関に残るのは、照会した事実(申込情報)です。
Q. 審査に落ちた場合、その事実は勤務先に伝わりますか。
伝わりません。貸金業法第21条第1項第5号は、借入れに関する事実を本人以外に明らかにすることを禁じています。また信用情報機関の記録を閲覧できるのは加盟事業者に限られ、勤務先は対象外です。
Q. 何社にも申し込むと不利になりますか。
不利に働く可能性があります。CICは申込情報を照会日から6か月間保有しており、契約に至らなかった申込みも記録として残ります。短期間に複数社の申込履歴が並ぶと、次に審査する会社はその状態を前提に判断することになります。
借りたあとの話も先に見ておくと、判断が変わることがあります。毎月いくら返すかで総額がどれだけ動くのかはカードローンの返済を比較する|毎月の額で総額が34万円変わるに計算で示しました。
なお、個人事業主やフリーランスの方は、在籍確認の前に検討できる手段があります。売掛金の前倒し、納税の猶予、公的融資など、借入より先に試せる選択肢を借りる前に試す資金繰りの手段で9段階に整理しました。すでに請求書が手元にあるなら、売掛金を現金化する方法のほうが早く、総額も安く済む場合があります。
まとめ
要点は3つです。
- 「勤務先への電話」は法律上の義務ではありません。貸金業法第13条第1項が義務づけているのは返済能力の調査であって、方法は指定されていません。だから書類での代替が成り立ちます。
- 在籍確認で確かめているのは「その勤務先に在籍している」という一点だけです。年収も勤続年数も分かりません。確認したいことが一つなら、手段は一つでなくてよいのです。
- 勤務先に確実に知られるのは、借りる前ではなく借りたあとです。給与の差押えは、裁判所から勤務先に命令が届くため、避ける方法がありません。心配の重心は、そちらに置いたほうがいいと思います。
そして、申し込んだ記録は6か月残ります。不安から手当たり次第に申し込むことが、次の選択肢を狭めることがあります。焦って動く前に、公的な制度や支払いの猶予といった、借りずに済ませる手を一度並べてみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の利用を推奨するものではありません。制度や各社の運用は変更される場合があります。個別の判断については、各制度の窓口や専門家にご確認ください。
出典(2026年9月15日確認)
- 貸金業法(昭和58年法律第32号)第13条、第13条の2、第21条 / e-Gov法令検索
- 貸金業法施行規則(昭和58年大蔵省令第40号)第19条 / e-Gov法令検索
- 年収を証明する書類とは / 日本貸金業協会
- CICが保有する信用情報 / 株式会社シー・アイ・シー
- 銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせについて(2017年3月16日)/ 一般社団法人全国銀行協会
- 銀行カードローンの実態調査結果について(平成30年8月22日)/ 金融庁
文責:株式会社オルカン 代表取締役 髙橋 稔

