フリーランスの報酬が支払われない|まず使う制度と無料の相談窓口

フリーランスの報酬が支払われない|まず使う制度と無料の相談窓口 資金繰りの基本

先に結論を書きます。報酬の支払期日は、当事者の合意だけで決まるものではありません。フリーランス法は、発注者が納品物を受け取った日から60日以内に支払期日を定めるよう義務づけており、定めなかった場合は受領日が支払期日とみなされます。つまり「そのうち払う」は法律上成立しません。そして未払いは、無料の窓口に相談でき、公正取引委員会に申し出ることもできます。この記事では、どの制度が使えて、どこに連絡すればよいのかを、条文にあたって整理します。

まず確認する3つのこと

私はファクタリングの審査をする側にいます。売掛金の相談を受けるとき、最初に確認するのはいつも同じ3点です。未払いの相談でも順番は変わりません。

1. 契約条件が書面か電磁的方法で明示されているか。 メール、チャット、発注書、何でも構いません。給付の内容、報酬の額、支払期日が記録に残っているかどうかです。

2. 支払期日として何日が定められているか。 定められていない場合、法律上は別の日が支払期日とみなされます。後で詳しく説明します。

3. 相手が従業員を使っているかどうか。 これで適用される規定が変わります。

この3点が分かれば、次に何ができるかは自動的に決まります。

支払期日は法律で決まっている

2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス法が、支払期日を直接規定しています。

第4条第1項は、次のように定めています。

特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

重要な点が二つあります。ひとつは「検査をするかどうかを問わず」。検収が終わっていないことを理由に60日を超えることはできません。もうひとつは「できる限り短い期間内において」。60日はあくまで上限であって、標準ではありません。

そして第2項が、定めなかった場合を埋めています。

前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

状況支払期日として扱われる日根拠
60日以内の期日を定めたその定めた日4条1項
支払期日を定めなかった給付を受領した日4条2項
60日を超える期日を定めた受領日から60日を経過する日4条2項
再委託で、明示の要件を満たす場合元委託の支払期日から30日以内4条3項
再委託で期日を定めなかった元委託の支払期日4条4項

第5項は「特定業務委託事業者は、第一項若しくは第三項の規定により定められた支払期日又は第二項若しくは前項の支払期日までに報酬を支払わなければならない」と定めています。義務です。

誰に適用されるのか

用語が分かりにくいので整理します。公正取引委員会のパンフレットによれば、特定受託事業者は、個人であって従業員を使用しないもの、または法人であって代表者以外に役員がなく従業員も使用しないものです。いわゆる一人親方・フリーランスがここに入ります。

特定業務委託事業者は、個人であって従業員を使用するもの、または法人であって二以上の役員があるか従業員を使用するものです。従業員のいない一人会社から発注を受けた場合は、支払期日の規定(4条)は適用されません。相手の規模を確認するのは、このためです。

発注者に課されている義務

フリーランス法が発注者に課している義務は、支払期日だけではありません。

条文内容対象
第3条給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で直ちに明示する業務委託事業者すべて
第4条受領日から60日以内に支払期日を定め、その日までに支払う特定業務委託事業者
第5条第1項受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用の強制を禁止1か月以上の業務委託
第5条第2項経済上の利益の提供要請、不当なやり直しの禁止1か月以上の業務委託

第5条の禁止行為は、公正取引委員会のパンフレットによれば1か月以上の業務委託に適用されます。条文上は「政令で定める期間以上の期間行うもの」とされており、その期間が1か月です。

第5条第1項第4号の「買いたたき」は、条文では「特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること」と表現されています。単価を一方的に下げられたときは、この条文を確認してください。

2026年1月から、下請法は「取適法」に変わった

もうひとつ知っておくべき変更があります。下請代金支払遅延等防止法(下請法)は2026年1月1日に改正法が施行され、中小受託取引適正化法(取適法)になりました。用語も変わっています。

旧新
親事業者委託事業者
下請事業者中小受託事業者
下請代金製造委託等代金

公正取引委員会のリーフレットによれば、主な変更点は次のとおりです。

  • 従来の資本金基準に加えて、従業員基準(300人、100人)が追加された
  • 対象取引に特定運送委託が追加された
  • 協議に応じない一方的な代金決定が禁止行為に加わった
  • 手形払いが禁止され、支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難な支払手段も禁止された

支払期日は従来どおり「受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内」で、遅延利息は年率14.6%です。

フリーランス法と取適法は、どちらが適用されるかが取引の内容と当事者の規模で決まります。両方に該当する場合もあります。自分でどちらか決める必要はなく、後述の窓口に相談すれば整理してもらえます。

無料で使える窓口がある

未払いの相談で、最初に使うべき窓口があります。

フリーランス・トラブル110番です。厚生労働省から第二東京弁護士会が受託して運営しており、弁護士に無料で相談できます。

  • 電話:0120-532-110(通話無料)
  • 受付:9時30分〜16時30分(土日祝日を除く)
  • メール:help@freelance110.jp

相談だけではありません。この窓口は和解あっせんの手続きも扱っています。第二東京弁護士会仲裁センターが相手方に連絡を取り、2時間程度の期日を設けて話し合う仕組みです。費用は無料とされています。

ただし性質は理解しておいてください。運営側の説明によれば、あっせんは「拘束力のない形で解決案を提示する」もので、それを受けるかどうかは当事者の自由です。相手が応じなければ成立しません。強制力はないかわりに、費用がかからず、弁護士が間に入るという設計です。

公正取引委員会・中小企業庁への申出

窓口の相談で解決しない場合、行政に動いてもらう道があります。フリーランス法第6条第1項です。

業務委託事業者から業務委託を受ける特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、公正取引委員会又は中小企業庁長官に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。

第2項は、申出があったときは「必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない」としています。行政の側に調査の義務があります。

その後の流れは次のとおりです。

段階根拠内容
申出6条1項公正取引委員会または中小企業庁長官へ
報告徴収・立入検査11条帳簿書類その他の物件を検査できる
勧告8条支払いその他必要な措置をとるよう勧告
命令9条1項勧告に従わないとき、措置を命ずる
公表9条2項命令をした旨を公表できる
罰金24条1号命令違反は50万円以下の罰金

第25条は両罰規定で、従業者が違反行為をしたときは行為者を罰するほか、法人に対しても同じ刑を科すと定めています。

申し出たことを理由に切られないか

もっとも多い心配がこれです。条文は正面から答えています。第6条第3項です。

業務委託事業者は、特定受託事業者が第一項の規定による申出をしたことを理由として、当該特定受託事業者に対し、取引の数量の削減、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない。

取引の停止も、数量の削減も、条文で名指しされています。もちろん条文があることと、実際に関係が元に戻ることは別です。ただ、「言えば切られる」という前提で黙る必要はありません。

遅延損害金はいくら請求できるか

支払期日を過ぎた分については、遅延損害金を請求できます。契約に定めがなければ法定利率です。

民法第419条第1項は、金銭債務の不履行による損害賠償の額は「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める」としています。同条第2項は「債権者は、損害の証明をすることを要しない」と定めており、損害が出たことを立証する必要はありません。

法定利率は民法第404条第2項により年3%です。3年ごとに見直される仕組みですが、法務省の告示によれば、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期間も年3%のままで変動していません。

未払額30日60日90日180日
10万円約246円約493円約739円約1,479円
30万円約739円約1,479円約2,219円約4,438円
50万円約1,232円約2,465円約3,698円約7,397円
100万円約2,465円約4,931円約7,397円約1万4,794円

正直に言えば、金額としては大きくありません。取適法が適用される取引であれば遅延利息は年14.6%になり、50万円を90日で1万8,000円程度と桁が変わりますが、それでも本体の未払額に比べれば小さい。

遅延損害金の意味は、金額よりも請求の姿勢を示すことにあります。請求書に「支払期日を過ぎた分については法定利率により遅延損害金が発生します」と一行入れるだけで、相手の優先順位は変わります。

制度の外で、資金繰りをどうつなぐか

制度が動くには時間がかかります。その間の資金繰りは別の問題です。

まず、支払いを待ってもらう側に回れないかを確認します。 納税の猶予、国民健康保険料や国民年金保険料の減免・猶予、家賃や公共料金の分割。借りて払うより、待ってもらうほうが総額は小さくなります。制度や運用は自治体で異なるため、納付書に記載された窓口で確認してください。

次に、入金と支払いの時期を紙に出します。 どの請求がいつ入るはずで、どの支払いがいつ出ていくのか。これが見えていないと、どれだけ足りないのかも、いつまで持つのかも判断できません。手順は資金繰り表の作り方に書きました。

他に請求済みの売掛金があるなら、それを期日前に現金化する方法もあります。 未払いになっている債権ではなく、健全に回っている取引先への請求のほうです。当社は5万円から取り扱っています。何を見て判断しているかはファクタリングの審査で実際に見ている5つのことに、融資との違いはファクタリングと銀行融資は何が違うのかに整理しています。

ひとつ注意しておきます。未払いで困っている状況に、「どんな債権でも買い取る」「審査なしで即日」と持ちかけてくる相手があります。契約の形がファクタリングでも、実態が貸付けであれば貸金業の登録が必要です。見分け方は契約書のここを見れば違法な業者が分かるにまとめました。

よくある質問

Q. 契約書がありません。それでも請求できますか。

できます。フリーランス法第3条は、発注者の側に書面または電磁的方法での明示を義務づけています。明示していないこと自体が発注者側の問題であり、請求できない理由にはなりません。メール、チャット、SNSのやり取り、納品したファイル、打ち合わせの記録。残っているものを時系列で並べてください。

Q. 支払期日を決めていませんでした。いつが期限になりますか。

フリーランス法第4条第2項により、給付を受領した日が支払期日と定められたものとみなされます。納品した日が期限です。

Q. 「検収が終わっていないから払えない」と言われました。

第4条第1項は「給付の内容について検査をするかどうかを問わず」60日以内に支払期日を定めなければならないと明記しています。検収の遅れを理由に60日を超えることはできません。

Q. 相手が一人で会社をやっている場合はどうなりますか。

支払期日を定める第4条は、特定業務委託事業者に適用されます。公正取引委員会の説明によれば、これは従業員を使用する個人、または二以上の役員があるか従業員を使用する法人です。役員が代表者一人で従業員もいない会社からの発注には、第4条は適用されません。ただし民法上の請求はできますし、第3条の明示義務は業務委託事業者一般にかかります。

Q. 申し出たら取引を切られませんか。

フリーランス法第6条第3項が、申出をしたことを理由とする取引の停止、数量の削減その他の不利益な取扱いを禁止しています。

Q. 相談にお金はかかりますか。

フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省から第二東京弁護士会が受託して運営しており、相談は無料です。和解あっせんの手続きについても費用は無料とされています。

Q. 下請法はなくなったのですか。

名称と内容が変わりました。2026年1月1日に改正法が施行され、中小受託取引適正化法(取適法)になっています。従業員基準の追加、特定運送委託の追加、手形払いの禁止などが加わりました。支払期日の60日ルールと遅延利息年14.6%は維持されています。

なお、支払いを待っている間の資金繰りそのものについては、手段が4つあります。コストの安い順に並べたものを個人事業主が売掛金を現金化する4つの方法|手数料を年利に直して比べるに整理しました。

未払いではなく「入金が遅いだけ」の場合は、対処が変わります。報酬サイトの構造と稼働の谷の埋め方はフリーランスエンジニアの入金が遅いで扱っています。

まとめ

要点は3つです。

  1. 支払期日は合意だけで決まりません。フリーランス法第4条は受領日から60日以内と定め、定めなかった場合は受領日そのものが支払期日とみなされます。「そのうち払う」という状態は、法律上は成立していません。
  2. 無料の窓口があります。フリーランス・トラブル110番は弁護士への相談も和解あっせんも無料です。それで動かなければ、公正取引委員会・中小企業庁への申出という道があり、勧告、命令、公表、50万円以下の罰金まで筋道が用意されています。
  3. 申し出たことを理由に切られることは、条文で禁止されています。取引の停止も数量の削減も第6条第3項に名指しされています。

そのうえで、制度が動くまでの資金繰りは別に手当てが要ります。まず待ってもらえる支払いを探し、入金と支払いの時期を紙に出す。ここから始めてください。


本記事は、当社における審査の考え方をまとめたものです。判断の基準は事業者ごとに異なります。また、記載している条件は変更される場合があります。個別の法的判断については、弁護士等の専門家にご確認ください。

出典(2026年9月18日確認)

  • 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第3条・第4条・第5条・第6条・第8条・第9条・第11条・第24条・第25条 / e-Gov法令検索
  • 民法(明治29年法律第89号)第404条・第419条 / e-Gov法令検索
  • フリーランス・事業者間取引適正化等法 パンフレット / 公正取引委員会
  • 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ / 公正取引委員会
  • 令和8年4月1日以降の法定利率について / 法務省
  • フリーランス・トラブル110番(和解あっせん)/ 厚生労働省・第二東京弁護士会

文責:株式会社オルカン 代表取締役 髙橋 稔